『日本古代史』佐藤洋二郎

本書では、主に古墳時代以前の日本の古代史について、著者独自の意見が述べられている。古代の日本では文献がないため、発見された遺跡や中国の文献や、あるいは後世の人々が書いた文献から推測されたものが古代史になっているが、必ずしもそれが正しいとは限らないと言う。文献が残されているものでも、その当時の為政者や権力のある者が自分に都合の良いように書いた、あるいは書かせたのではないか考えるべきで、文献があるからといってその額面通りに受け取るのはどうかというのが著者の主張である。

古代日本では言霊と怨霊思想が日常生活に根付いていた、と言うのは、井沢元彦と同じ主張であるが、天照大神が男性だったとか、出雲族は勢力が巨大だったゆえに消された、とか、欠史八代についての意見等、興味深いところもあった。著者が何度も書いていた、天之日矛一族については、あまりよく理解できなかった。本書のあちこちで、戦後の歴史教育で歴史が変えられていることを憂い明治維新前後で、神社の格上げ格下げがあったことについて述べられていたのは述べられていたのも初耳で興味深かった。

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