『IT戦争の支配者たち』深田萌絵

1つ前に読んだ『光と影のTSMC 誘致』は、熊本県に誘致されたTSMCについて特化した内容であったが、本書は、TSMCが世界中でどのようなことをしているのか、特に米国、中国、韓国とどのように関係し市場を独占しようとしているのかについて、詳しい実例を挙げ説明がなされている。著者はこの本で、半導体業界を支配する闇社会について、そして日本がいかにITについて無知で、それが国を滅ぼす方向に向かっているか警鐘を鳴らしている。半導体チップの会社を設立し、苦労と失敗を重ねてきている経験があるがゆえに、彼女の意見には重みがあり、かつ驚かされる内容がたくさんあった。

驚かされた内容を以下に紹介しておく。しばらく続いた半導体不足は浙江財閥の仕業であること、台湾の会社に買収されたパナソニックの半導体部門は軍事レーダー技術に使用される半導体チップ製造技術を持っていたこと、そしてその会社は「チンパン」という台湾秘密結社が経営しており半導体チップ設計を盗んだ前科があること、台湾に日本の半導体技術移転に積極的に動く政治家に松下整形塾出身者が多いと言うこと(高市早苗もその1人か)、台湾と韓国はともに日本を頼ってエレクトロニクスを自国で成長させたがライバル関係であり、「日本における嫌韓親台湾プロパガンダで儲けているのは間違いなく台湾人浙江財閥であり、目的は半導体産業のライバルであるサムスンを潰すためである」(p-175)こと、日米半導体協定とバブル崩壊について、台湾のロビーストについて、孫正義は浙江財閥の手先でトロンを潰した件、北朝鮮と中国のハッカー集団について、自動運転の車はハッカーに乗っ取られる危険性が高いこと、朝日による偏向報道は日本の技術をつぶしていること、半導体関係は利権が渦巻いていることなども書かれていた。

著者は、このような中で何をすべきかについても書いていいる。まず、ずいぶん前から言われているスパイ防止法が必要であること、そして、半導体チップの現状を打破するための措置として、環境にやさしい、故障を起こさない再生可能なリユーザブルチップを設計することと、そのチップを再利用するための周辺機器の設計を標準化すること(p-281)だ。日本はスパコン技術の開発を続けるべきだとも述べている。現在の半導体業界は出版界で例えれば、作家よりも印刷業者の方が偉いと言う状態で、ベストベストセラー作家よりも印刷業者の方が偉いと言うのはおかしい。(p-285)もし今戦わなければ次の世代はなぜ先人はこの国の腐敗を放置してきたのかと、若き日の自分と同じように怒りと葛藤を招くだろうと言う深田萌絵の正義感に頭が下がる。

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