『2025年日本はなくなる』内海聡

この書物は2023年2月に出版されているので、著者は2年先に日本がなくなると断言し、その理由が本書に書かれている。主なものを挙げると、コロナ禍で超管理社会が実現したこと、人口の減少、外国人による土地の爆買い、種子法と種苗法が成立した裏の理由、水道民営化の危険性、農薬の使用料、輸入農作物に含有する危険な農薬の規制緩和、漁業権の外資参入、外資による国有林買い、遺伝子組み換え食品規制の緩和とゲノム編集された食品の導入、TPPやFTAの導入が勧められたわけ、ほかいろいろな事項が挙げられ説明が加えられている。

この著者は精神科医であり、先日の東京知事選にも立候補し、ユーチューブでも自分の考えを発信し続けている。いわゆる陰謀論と言われる類のものを荒唐無稽と切り捨てる反面、著者自身の思い込みや決めつけも述べられているように私には感じられ、納得できるものとできないものとがあった。例えば、著者が取り上げた生鮮食品に含まれている農薬や危険物質(ネオニコチノイド等)についての説明は、私自身がしばらく忘れていたもので、著者の言うとおりであると思う。ホウレンソウや春菊、イチゴ等に許される残留農薬基準はEUのそれの10倍どころが600倍にもなるという。(p-125)逆に天皇という存在について著者は否定的で、天皇制が日本国民をダメにしているような書き方には賛同できなかった。「古事記」「日本書紀」が途方もないデマであり、その代わりに持ち出しているのが「竹内文書」である。この点についてはこの先も議論が分かれるのは間違いない。「竹内文書」の存在についてはもっと多くの人が知るべきだとは思う。

この本を読んでいて、この著者は悲観論者ではないかと思うことが幾度かあった。日本がなくなるというのだからもちろん楽観論者ではない。では日本を失くさないために何をすればよいのか。著者は「無理、日本は無くなる」という。「インターネットが普及した時代、ちょっと陰謀論に触れた結果、真実を知ったと勘違いし、その知識をひけらかせば世の中が変わると思い込んでいる「自称覚醒者」が増えてきた(中略)確実に100%日本は無くなると思っており、自称覚醒者はそれを助長している」(P-219 )その上で、著者は対策として5つの点を挙げ、これらを実行するのには時間がかかると断言し、「この本は安直な希望を与えるための本ではないのです。」(p-220)と結ぶ。いったいなんやねん?(2024年12月21日)

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