『花々と星々と』犬養道子

5・15事件で暗殺された犬養毅の孫にあたり、その現場を実際に見た犬養道子による自伝且つエッセイ。父の健が最初作家であったことから、明治末期から大正にかけて存在した同人誌『白樺』を通して志賀直哉、武者小路実篤、芥川龍之介川端康成等との交流がところどころに出てくる。川端康成も一度登場する。父が犬養毅の秘書になった前後に女子学習院に通い始めたときの様子や、学友、学内の様子の他、GHQに解体される前の宮家の子弟の様子を知ることもできる貴重な記録である。

犬養首相は中国に憧憬が深く、軍部が満州で勢力を伸ばそうと突っ走るのを止めようとしていた。彼を身近で見ていた著者は、幼い頃の体験を詳しく、記憶している限り書き留めている。蒋介石が自宅にいたこと、石井桃子が手伝いに来始めたときのことなどなど。著者の母や祖母のことも詳しく、暗殺前後の状況、母親の行動についても、当時の社会状況も。歴史の教科書で、犬養首相の暗殺を一つの事件として知るのではなく、首相を取りまく世間の様子を知ることができた。書き出しが幼い少女の回想で始まるので、最後までこのような感じなら読むのを止そうと思いつつ読んでいたが徐々に引き込まれ、手に取ってよかったと思える一冊である。

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