
なぜこの本を読もうと思ったのかは思い出せない。著者は前書きで、本書は「実学書」である。(中略)本書には、あくまでも米国政治を「動的」に理解するために必要な視座のみがまとめられている。そのため、筆者が優先順位の観点から後回しと判断した情報は、一般的な米国政治解説本に載っていることでもバッサリ削っている。それでも米国政治を理解するためには、なんら支障は無いどころか、かえってノイズが減ってスッキリしているものと思う。本書を手に取ってくださった読者諸氏には、本書ぜひ「実学書」として活用し、ニュース報道などを分析する際の脳としてご利用いただければ幸甚である。」(まえがき p-5)と書かれている。なのでこの本を読んだからといって、儲かる秘訣がわかるものではないし、財テクについて知識が付くわけでもない。本書は2022年3月に出版されているので、その当時の様子から今を予測しているという点で良い試みではあるが、トランプ大統領が就任し、わずか1月の間に非常にいろいろなことが起こっている中で、著者が第3章で予測した「2022年中間選挙2024年大統領選挙」についてまず最初に読んでみると、確かにあたっているところもあるが、それほどのこともないと感じた。
著者の予測は、当たっている事柄もあるが外れているところも大いにある。大体現在のトランプ政権の動きを予測するのは大変なことだ。この本で、米国の選挙制度について新しく学ぶことができたと同時に、バイデン政権、トランプ対カマラ・ハリスの影響など、既にSNSやインターネットで知っていることも多かった。米国の政策を5つの勘所として、「予算の決め方」「規制政策と大統領令」「外交・安全保障について」「政府交換、人事について」「選挙資金と司法人事について」が説明されていた(p-100)が、これらは大変勉強になった。筆者が重視するこれら5つの勘所の最大のポイントは、それが「静的なものではなく、動的」なもので、米国政治の教科書に出てくるような内容ではなく、政治的プレイヤーが生きた政治の中で何を意識しているのかを知ることが大事だと述べている。そしてこれらは、「米国政治全体の構図を決定する要素であり、個別の事案に立ち先立つ基礎的な視座となる」と述べている。(2025年2月)
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