この本は、「増補新版」で、昨年(2023)10月の初版である。1955年に京都大学の学術探検隊に同行し、西アジア諸国を歴訪した著者が、対立ではなく平行進化として東西の近代化を捉え、「中洋」を提唱している。本題の『文明の生態史観』とその続編『東南アジアの旅からー文明の生態史観・つづき』のほか九つの論文とエッセイで、著者が実際に訪れた60年代の東南アジア、アジア、アフリカ各国での見聞を、著者独自の考えを自由闊達に述べている。この本のタイトルと著者の名前は、これまでに何度も聞いたことがあったが、今回初めて手に取って読んだ。
『文明の生態史観』で最も印象的だったのは、著者が提唱するところの文明が発達する仕組みとその過程で、以下に簡単に引用する。「旧世界ーつまりアジア、ヨーロッパおよびアフリカ北半をふくむ世界を、現在の状態と、そこに至るまでの歴史の成り行きに基づいて分類すると、おのずからはっきりとしたふたつの型に分けることが出来るように思うのであります。ひとつを第一地域と名付け、もう一つを第二地域と名付けます。第一地域と言うのは日本とヨーロッパ諸国がこれに属します。第一地域におけるこの二つの部分は、互いに遠く離れていますが現在の文明のありかたと、歴史を支配してきたダイナミックスという点では似たところがたくさんあり、同じカテゴリーに属するものと考えられるのであります。第二地域と言うのは、旧世界の中から第一地域を除いたあとの地域全部がこれに属します。この中には四つの大きなブロックが存在します。すなわち、中国世界、インド世界、イスラーム世界およびロシア世界がそれであります。この四つの世界は、それぞれにまた、おおくの共通点を持っていると考えられます。」(後略)p-167
上記の著者の論説に対し、それ以降たいへんな数の反論が出たと著者は書いていて、それらの反論もいくつか引用されている。小生は著者のこの捉え方はなかなか面白いと思った。大学入試に出て来そうな文面ではあるが、良い勉強になった。増補版の追加として『海と日本文明』も良かったし、『比較宗教論への方法論的おぼえがき』も、お道を信仰している小生には面白く読めた。前者の中に、727年に渤海国使節団が来朝した、とあり、初めて知ったことでいささか驚いた。これについての本とその著者が主お買いされていたので、今度本を読んでみたい。後者では、宗教と疫学とが比較されていることについては???ではあったけれども。(2024年12月)
コメント